京橋のアーティゾン美術館で、この夏注目すべき展覧会 ‘彼女たちのアボリジナルアート オーストラリア現代美術’ が開催されています。
‘アボリジナル’ とはオーストラリアの先住民やそれに由来する人たちのことで、2006年に同館(当時はブリヂストン美術館)で開催された「プリズム:オーストラリア現代美術展」以来のアボリジナルアートの展覧会。しかも今回は新進の女性作家8名を紹介とのこと。今年最も楽しみにしていた展覧会を訪れました。
彼女たちのアボリジナルアート オーストラリア現代美術展,2025 アーティゾン美術館
2006年開催時の展覧会は民族色と現代美術的な要素が融合したオリジナル性の高い無骨で大胆な作品が多数紹介されたのを覚えています。本展はより明るく、先進的で洗練された作品群との印象を受けました。
ユーカリの樹皮に顔料で彩色した伝統的でポップな立体作品。槍などの道具や石炭を用いた首飾りを現代的にアレンジした作品。
ノンギルンガ・マラウィリ〈ボルング〉,2016 アーティゾン美術館蔵
ノンギルンガ・マラウィリ〈ワンダウイの魚捕り網〉,2013 ニューサウスウェールズ州立美術館蔵
ジュリー・ゴフ〈1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち〉,2008 オーストラリア国立美術館蔵
ジュリー・ゴフ〈ダーク・バレー,ヴァン・ディーメンズ・ランド〉,2008 ニューサウスウェールズ州立美術館蔵
ジュリー・ゴフ〈バインド〉,2008 ニューサウスウェールズ州立美術館蔵
麻布に天然藍や合成ポリマー絵具で描いたミクストメディア作品。3Dやホログラムを用いたインスタレーション作品。有袋類の革を使った作品。
ジュディ・ワトソン〈記憶の深淵〉,2023 作家蔵(ミラニ・ギャラリー)
ジュディ・ワトソン〈記憶の深淵(部分,右)〉,2023 作家蔵(ミラニ・ギャラリー)
ジュディ・ワトソン〈毒性赤潮の大量発生(左)〉,〈赤潮(右)〉,1997 ニューサウスウェールズ州立美術館蔵
マリィ・クラーク〈私を見つけましたね,目に見えないものが見える時〉,2023 作家蔵(ヴィヴィアン・アンダーソン・ギャラリー)
マリィ・クラーク〈私を見つけましたね,目に見えないものが見える時(部分)〉,2023 作家蔵
マリィ・クラーク〈私を見つけましたね,目に見えないものが見える時(部分)〉,2023 作家蔵
マリィ・クラーク〈ポッサムスキン・クローク〉,2020-21 ヴィクトリア州立美術館蔵
マリィ・クラーク〈故郷を纏う〉,2016 作家蔵(ヴィヴァン・アンダーソン・ギャラリー)
伝統素材で造形された動物たちによるコマ撮りストーリー作品。発光する吹きガラスによる近未来的なインスタレーション作品。
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ〈私の犬,ブルーイーとビッグ・ボーイ〉,2018
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ〈タンギ(ロバ)〉,2021
イワニ・スケース〈えぐられた大地〉,2017 アーティゾン美術館蔵
イワニ・スケース〈えぐられた大地〉,2017 アーティゾン美術館蔵
イワニ・スケース〈えぐられた大地(部分)〉,2017 アーティゾン美術館蔵
イワニ・スケース〈えぐられた大地(部分)〉,2017 アーティゾン美術館蔵
イワニ・スケース〈ガラス爆弾(ブルーダニューブ)シリーズⅠ〉,2015 オーストラリア国立美術館蔵
イワニ・スケース〈ガラス爆弾(ブルーダニューブ)シリーズⅡ〉,2015 オーストラリア国立美術館蔵
イワニ・スケース〈えぐられた大地〉,2017 アーティゾン美術館蔵
そして、ダイナミックなタッチによる抽象表現的な平面作品。
いずれの作家も極めて個性豊かで独創的。欧米など昨今の美術の潮流に影響されない真のオリジナリティを感じました。
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ
エミリー・カーマ・イングワリィ〈無題〉,1989 ジャネット・ホームズ・ア・コート・コレクション
特に心を奪われたのは ‘マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ’ と ‘エミリー・カーマ・イングワリィ’ の抽象作品。いずれも80歳頃から絵画を描き始め、亡くなるまでの8~10年間でそれぞれ2,000点、3,000点の作品を制作したとのこと。
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈ディーバーディビ・カントリー〉,2012 クイーンズランド州立美術館蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈ニンニュルキ〉,2010 個人蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈ニンニュルキ〉,2011 ベンディゴ美術館蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈バラマンディの物語,マッケンジー川にて〉,2008 個人蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈キング・アルフレッド・カントリーにある川〉,2006 個人蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈キング・アルフレッド・カントリーのストーリーを伝える場所〉,2006 個人蔵
マーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリ〈ディーバーディビ・カントリー,トップウェイ〉,2006 クイーンズランド州立美術館蔵
エミリー・カーマ・イングワリィ〈無題(最後のシリーズ)〉,1996 個人蔵
エミリー・カーマ・イングワリィ〈アライチー〉,1995頃 オーストラリア国立美術館蔵
エミリー・カーマ・イングワリィ〈アライチーのドリーミング〉,1995 西オーストラリア州立美術館蔵
エミリー・カーマ・イングワリィ〈無題〉,1996 アーティゾン美術館蔵
エミリー・カーマ・イングワリィ〈アルハルクラⅡ〉,1992 ジャネット・ホームズ・ア・コート・コレクション
エミリー・カーマ・イングワリィ〈ワイルド・オレンジのドリーミング〉,1989 ジャネット・ホームズ・ア・コート・コレクション
エミリー・カーマ・イングワリィ〈アウェリェ〉,1989 ジャネット・ホームズ・ア・コート・コレクション
エミリー・カーマ・イングワリィ〈夏の乾燥した野花〉,1991 西オーストラリア州立美術館蔵
彼女らが描く線描(筆触)には意図的な狙いや思惑などコンセプチュアル的な装いが一切感じられず、魂と直結した迷いのない線や色がもたらす純粋芸術だと思いました。大変驚かされるとともに静かな興奮が湧き上がってきました。
本展は ‘美術(芸術)の本質とは何なのか’ を鑑賞者に問いかける貴重な展覧会だと思います。多くの方が当展を訪れたらいいなと思いました。
アーティゾン美術館