‘書’ を現代アートに昇華させた書家で現代美術家の 井上有一
1916年東京生まれの井上有一は小学校の教員を41年間務めた教育者であり、現代書家でもあります。
生涯、職業書家にはなることを拒み、純粋に己が追求する独自の ‘書’ を創作してきました。








彼の生み出す一文字からなる ‘書’ はこれまでの書道のイメージや概念とは全く異なり、現代美術における抽象表現主義的な作風を彷彿とさせます。





‘文字’ から離れた抽象的な前衛書は、先駆者である比田井南谷、上田桑鳩、森田子龍らが試みていますが、井上有一の作品は、文字をモチーフにしながらも ‘書’ を越えた極めて独創的な ‘アート(美術、芸術)’ であると感じます。






1991年に埼玉県立近代美術館で開催された大規模な回顧展が思い出されます。全神経とエネルギーを一筆に集中させることで生み出された作品は、鑑賞者の胸をさすような迫力と緊張感に満ちていました。
前衛書は現在も多くの書家たちに受け継がれていますが、魂が込められた井上有一の唯一無二の ‘書’ は今後生まれることはないように思います。


