六本木の森美術館で9月25日から ‘ルイーズ・ブルジョワ展(地獄から帰ったところ 言っとくけど、素晴らしかったわ)’ が始まりました。ブルジョワといえば、六本木ヒルズ広場の巨大な蜘蛛の彫刻 ‘ママン(1999,2003)’ を思い浮かべますが、それ以外の作品は殆ど知りませんでした。
蜘蛛〈ママン〉,1999,2003 六本木ヒルズ広場
ブルジョワは1911年パリ生まれ、98歳の2010年までアメリカを活動の場とし、彫刻や絵画、版画作品などを制作してきた女流の現代美術作家です。
ルイーズ・ブルジョワ展,2024 森美術館
今回、 ‘蜘蛛’ を含めた作品の全体像を体感した感想は、「なんて不安定な精神のもとに制作された作品ばかりなのか」でした。彼女の若き頃の家族との関係性、特に母と子の関係や母性。生涯にわたり見捨てられることへの恐怖に苦しんだとの解説がありました。彼女が持つ様々な感情が作品を生み出す契機になっていたのだと感じました。
蜘蛛,1997 イーストン財団(ニューヨーク)
かまえる蜘蛛,2003 イーストン財団(ニューヨーク)
巨大な蜘蛛は、外敵を威嚇し 子供を守る ‘母’ を象徴しているそうです。母性を象徴する作品の他、‘カップル’ と題される男女の関係を表す作品も多数ありました。
家出娘,1938頃 イーストン財団(ニューヨーク)
堕ちた女[ファム・メゾン(女・家)],1946-1947 個人蔵(ニューヨーク)
荷を担う女,1949 イーストン財団(ニューヨーク)
シュレッター,1983 個人蔵(ニューヨーク)
自然研究,1984 イーストン財団(ニューヨーク)
胸と刃,1991 個人蔵(ニューヨーク)
ヒステリーのアーチ,1993 イーストン財団(ニューヨーク)
カップルⅢ,1997 イーストン財団(ニューヨーク)
無題,1998-2014 前澤友作コレクション(千葉)
青空の修復,1999 個人蔵(ニューヨーク)
トピアリーⅣ,1999 個人蔵(ニューヨーク)
もとに戻す(内部要素),1999-2000 シャトー・ラ・コスト(フランス)
やり直す(内部要素),1999-2000 シャトー・ラ・コスト(フランス)
いずれ ショッキングな(しかし不快感はない)作品が大半を占める本展覧会は、始まったばかりにも関わらず、館内は多くの来場者で満杯でした。それも半数以上は海外からのツーリストと思われ、多国籍な鑑賞空間でした。
部屋X(肖像画),2000 個人蔵(ニューヨーク)
拒絶,2001 イーストン財団(ニューヨーク)
カップル,2001 個人蔵(ニューヨーク)
やるかとるか,2002 イーストン財団(ニューヨーク)
カップル,2003 個人蔵(ニューヨーク)
隠された過去,2004 個人蔵(ニューヨーク)
良い母,2003 イーストン財団(ニューヨーク)
無口な子,2003 イーストン財団(ニューヨーク)
家族,2007 個人蔵(ニューヨーク)
授乳,2007 イーストン財団(ニューヨーク)
授乳,2007 イーストン財団(ニューヨーク)
花,2009 個人蔵(ニューヨーク)
日本国内にも、草間彌生氏やイケムラレイコ氏のように独自の強い個性を発する作品を世に出している女流作家がいますが、1世紀以上も前に生まれたブルジョワ女史のような作家が、当時 一般に認知されてきたこと自体 とても驚かされました。
人間の本性をえぐる作品群。美しく心地よいものだけが美術(芸術)ではないという価値観。
海外、特にアメリカ美術界の懐の深さを改めて感じました。