2023年秋、渋谷区立松濤美術館で ‘杉本博司 本歌取り 東下り’ と題される展覧会が開催されました。松濤美術館は渋谷駅から道玄坂を登った閑静な場所にある落ち着いた雰囲気の美術館です。
杉本博司氏は大判カメラを用いた写真による表現をベースとした現代美術作家で、写真家であるともに建築やデザイン、演出なども手がけており、国際的に評価が高い作家です。
彼の作品は、過去に原美術館や東京都写真美術館など比較的現代美術を中心に紹介している美術館で目にしてきたように思います。緻密な計算によって創作されたと思われる作品はコンセプチュアルで哲学的と感じられます。
一方で、作品の根幹は 一貫して人間やその意識の成り立ち 起源など、根源的で土着的なものを探求し、過去に遡り紐解きながら写真媒体に定着させてきたように感じます。そこが、彼の作品に惹かれる理由なのかもしれません。
私の好きな作品は 海と水平線による幻想的な写真作品 ‘海景’ シリーズや、アメリカ自然史博物館の動物や古代人を風景にした作品 ‘ジオラマ’ シリーズの他、放電による稲妻の閃光作品 ‘ライトニング・フィールド’ シリーズ、京都三十三間堂の千体仏を自然光で撮影した ‘仏の海’ シリーズなどです。





本展は、和歌の伝統技法である‘本歌取り’にたとえ、古典と向き合い過去の作品と融合させながら新たに独自の作品を生み出そうとした試みです。今回の展覧会は、洗練され研ぎ澄まされた過去の作品展とは多少趣が異なり、ユニークで人間味のある展覧会だと感じました。会場内で撮影可の作品を紹介します。







