美術展巡り74 杉本博司展  ~東京国立近代美術館~

この夏、竹橋の東京国立近代美術館で ‘杉本博司 絶滅写真 展’ が開催されています。

杉本博司展は、本ブロクの ‘美術展巡り8(杉本博司 本歌取り 東下り)’ で一度紹介していますが、今回は2016年の東京都写真美術館でのリニューアルオープン記念展 ‘杉本博司 ロスト・ヒューマン’ 以来の大規模展で、今年 期待していた展覧会の一つです。

杉本博司展, 2026年 東京国立近代美術館

タイトルの ‘絶滅写真’ はデジタル写真全盛の現在、絶滅しかけている ‘銀塩写真’ のことを指しており、大判カメラとフィルム(印画紙)を使って1970年代から現在までに撮影(制作)された約60点の銀塩写真が紹介されました。

本展の大きな特徴は、‘ジオラマシリーズ’、‘劇場シリーズ’、‘海景シリーズ’、‘建築シリーズ’、‘肖像シリーズ’、‘放電場シリーズ’など過去の代表作を、作品数を絞りつつも大画面に引き伸ばして展示された点で、杉本氏による写真作品の集大成を振り返るものです。

【ジオラマシリーズ】
アビシニアコロブス,1980
ガラパゴス,1980
ゴリラ,1994
類人,1994
ネアンデルタール,1994
クロマニヨン,1994
ホモ・エルガスター,1997
ポコット族,2025
ムブティ・ピグミー,2025
ホモ・エレクトス,2025
【劇場シリーズ】
U.A.プレイハウス,ニューヨーク,1978
シネラマ・ドーム,ハリウッド,1993
ユニオンシティ・ドライブイン,ユニオンシティ,1993
パレス・シアター,ゲーリー,2015
ガルニエ宮,パリ,2019

過去に小画面の同作品を何度か見てきましたが、今回はその数倍から数十倍の大画面で、これまで見たものとは比べものにならないほど圧倒的な存在感でした。国立近代美術館という歴史ある建造物の場を制しているようにすら感じました。

華厳滝,1977
【海景シリーズ】
カリブ海,ジャマイカ,1980
エーゲ海,ピリオン,1990
ボーデン湖,ウットヴィル,1993
リグリア海,サビオレ,1993
イギリス海峡,ウェストン・クリフ,1994
スペリオル湖,カスケード川,1995
相模湾,江之浦,2025

古典的でありながら写真の原点でもある銀塩写真。ここまで引き伸ばされたモノクロ写真からは、透明感、奥行き感など、吸い込まれるような臨場感とともに その凄みを体感しているようでした。

【建築シリーズ】
クライスラービル,1997
ワールド・トレード・センター,1997
シーグラムビル,1997
サンテリア・モニュメント,1998
サヴォア邸,1998
アインシュタイン・タワー,2000
S.C.ジョンソンビル,2001
バラガン邸,2002
【観念の形シリーズ】観念の形0003 ディニ曲面,擬球をねじって得られる負の定曲率曲面,2004
観念の形0006 クエン曲面,負の定曲率曲面,2004
数理模型014 定曲率曲面,双曲型の回転面,2012
P.P.T.R.D.037 棘のある三葉虫,2008
フォトジェニック・ドローイング017 屋根の輪郭線,レイコック・アビー 1835-1839頃,2008
【スタイアライズド・スカルプチャー シリーズ】スタイアライズド・スカルプチャー003 [川久保玲 1995年 秋-冬],2007
スタイアライズド・スカルプチャー008 [イブ・サンローラン 1965年 秋-冬],2007
スタイアライズド・スカルプチャー012 [三宅一生 1994年 春-夏],2007
スタイアライズド・スカルプチャー023 [マドレーヌ・ヴィオネ 1924],2007
スタイアライズド・スカルプチャー118 [クリスチャン・ディオール,Soirée 1947],2025
スタイアライズド・スカルプチャー120 [クリスチャン・ディオール,Bar 1947],2025

今回は、好きな作品の ‘ジオラマシリーズ’ や ‘海景シリーズ’ を間近でゆっくり鑑賞することができたことが嬉しく、また ‘劇場シリーズ’ や ‘肖像シリーズ’ など大画面になることで得た立体感やリアル感は新たな再発見となりました。

【肖像シリーズ】
ヘンリー八世,1999
リチャード一世,1999
ナポレオン・ボナパルト,1999
ヴィクトリア女王,1999
フィデル・カストロ,1999
昭和天皇,1999
ダイアナ,プリンセス・オブ・ウェールズ,1999
【放電場シリーズ】
放電場 128,2009
放電場 138,2009
放電場 163,2009
放電場 227,2009
【Opticksシリーズ】
Opticksシリーズ,(左から075,066,027),2018
Opticks 416,2018
Opticks 087,2025
陰翳礼讃98.0001,1998
伝寂蓮法師筆 地獄草紙詞書断簡 平安時代,(下)光学硝子五輪塔335 ノルウェー海,ベステローデン諸島,2011,1990
CAMERA MAN,2026

本展で展示されていなかった ‘三十三間堂シリーズ’ も、東京都写真美術館で10年前に大画面で展示されたことを思い返し、印象深かったのを覚えています。

銀塩写真を用いた究極の技術力と創造力。心の奥まで浸透するような美しく深遠な作品展でした。

目次