美術展巡り36 ヒルマ・アフ・クリント展  ~東京国立近代美術館~

竹橋の東京国立近代美術館で ‘ヒルマ・アフ・クリント展‘ が開催されています。

アフ・クリントは1862年スウェーデン生まれの女流画家で、1世紀以上前の時代にあって若くから抽象作品を描いてきた抽象画家の先駆的な存在です。

ヒルマ・アフ・クリント展,2025年 東京国立近代美術館

彼女は芸術学校でアカデミックな絵画を学びましたが、画家として活動を始めて以降 スピリチュアルな精神世界に傾倒し、神秘的で瞑想に満ちた不思議世界を空想させる絵画を生み出してきました。

今回の展覧会では、アジアで初めて彼女の作品が紹介されたそうです。会場を訪れたのは平日でしたが、抽象画の展覧会としては異例の満杯状態で、その8~9割が女性であったことに驚かされました。

5人 無題,1908
エロス・シリーズ WU 薔薇シリーズ グループⅡ,1907
原初の混沌 WU 薔薇シリーズ グループⅠ,1906-07
10の最大物 グループⅣ No.2 幼年期,1907
10の最大物 グループⅣ No.3 青年期,1907
10の最大物 グループⅣ No.6 成人期,1907
10の最大物 グループⅣ No.9 老年期,1907

展示では、優しい線や色彩で描かれた抽象模様のような大小様々な作品が並びました。いずれも幾何学的な直線や円を基調としていますが、精密に計算された真円ではなく、フリーハンド調で描かれた線は どこか柔らかさや不完全さを感じさせ、これに馴染んだ淡いパステル色のパターンが、見る人の心の中まで入り込んでくるようでした。

白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.1,1914-15
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.7,1915
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.10,1915
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.11,1915
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.13,1915
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.18,1914
白鳥 SUWシリーズ グループⅨ パートⅠ No.20,1914
知恵の樹 Wシリーズ No.1,1913
知恵の樹 Wシリーズ No.2,1913
知恵の樹 Wシリーズ No.3,1915
地図 グレートブリテン,1932
祭壇画 グループⅩ No.1,1915
祭壇画 グループⅩ No.2,1915
祭壇画 グループⅩ No3,1915
進化 WUS 七芒星シリーズ グループⅥ,1908
シリーズⅤ,1920
花と木を見ることについて アザミ,1922
花と木を見ることについて 無題,1922
花と木を見ることについて 無題,1922
花と木を見ることについて 無題,1922
花と木を見ることについて 無題,1933
花と木を見ることについて 無題,1922
穀物についての作品,1920
無題,1924(左),1930(中央),1931(右)

展覧会場を出たときには、心が穏やかになり体も軽くなったような感覚を抱きました。多くの女性鑑賞者が、これまで殆ど無名であった女性抽象画家のもとに自然と惹き寄せられているように感じました。

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