美術展巡り32 坂本龍一展  ~東京都現代美術館~

昨年末から今年2025年3月にかけて木場の東京都現代美術館で ‘坂本龍一 音を視る 時を聴く’ と題する展覧会が開催されました。

本展では2023年に亡くなった音楽家の坂本氏を中心に、映像やパフォーマンス活動を行うアーティスト集団 ‘ダムタイプ’ の高谷史郎氏、メディアアーティストの岩井俊雄氏、霧の彫刻家 中谷芙二子氏など総勢8名によるコラボレーション作品が展示されました。

会期の後半に訪れましたが、現代美術館としては珍しく連日大行列ができるほどの盛況ぶりでした。坂本氏はこれまで高谷氏とともに多くのコラボ作品を制作しており、本展ではこれらが一同に紹介されました。

坂本龍一+高谷史郎〈Life-fluid,invisible,inaudible…I〉,2007
坂本龍一+高谷史郎〈Life-fluid,invisible,inaudible…I〉,2007
坂本龍一 with 高谷史郎〈IS YOUR TIME〉,2017,2024@TOKYO ART BEAT

展示会場を回った感想は 坂本氏の作曲家としての軌跡というより、高谷氏らの映像やインスタレーションに坂本氏の ‘音’ が融合した総合芸術といった趣でした。多くの作品はとても感覚的で繊細なものでした。

坂本龍一×岩井俊雄〈Music Plays Images X Images Play Music〉,2024
坂本龍一×岩井俊雄〈Music Plays Images X Images Play Music〉,2024

中広場では中谷芙二子による霧の彫刻が演出され、こちらも音との融合による空間芸術でした。

坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎〈LIFE-WELL TOKYO〉霧の彫刻#47662,2024
坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎〈LIFE-WELL TOKYO〉霧の彫刻#47662,2024
坂本龍一+中谷芙二子+高谷史郎〈LIFE-WELL TOKYO〉霧の彫刻#47662,2024

坂本龍一で思い出されるのは、同じ作曲家の 武満 徹です。坂本氏が若い頃から晩年まで意識してきたとされる日本を代表する前衛音楽家です。作曲手法や生み出される音楽は異なりますが、映画をはじめ様々なアート領域での意欲的な創作活動はともに通ずるものがあったと感じます。両氏とも ‘音’ の可能性を追求してきた希有で純粋な音楽家であると思いました。

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