‘芸術はきれいであってはいけない うまくあってはいけない 心地よくあってはいけない’
これが芸術の三原則(根本原理)であると岡本太郎は著書 ‘今日の芸術(1954)’ で論じています。
‘きれい’ と ‘美しい’ は異質のものであり、たとえ醜く異端であっても心が揺さぶられるものを人は美しいと感じます。無目的に無心で描かれる子供の絵が無限の広がりをもって私たちの心をつかむのも、原始時代の洞窟壁画に心を奪われるのも、同様に 無条件の ‘美’ に人間の魂が呼応しているからだと思います。

岡本太郎は、日本各地に多くのモニュメントを制作してきました。大阪 ‘太陽の塔(1970)’はまさに妙な形で決してきれいで心地よいとはいえませんが、絶対的な ‘美’ を持って人々を魅了します。


山梨県にも当県立美術館の庭に ‘樹人(1971)’ が常設されており、日々来訪者を迎えてくれます。渋谷区青山 こどもの城(2015年閉館)の ‘子供の樹(1985)’ も形はヘンテコですがとても魅力的で、青山通りを歩くときは出会えるのを楽しみにしていました。



1980年に山梨県で開催された岡本太郎展では、広い庭園のあちらこちらに多くの彫刻やモニュメントが設置され(触れたり坐ったりもできた)、鑑賞者と一体となった作品たちは皆生き生きとしており、楽しい野外空間を創出していました。当時はそのまま常設される(購入した)と喜んでいましたが、展覧会終了後に作品たちが去ってしまい寂しい思いをしたのを覚えています。









岡本太郎没後、1999年に川崎市の生田緑地に川崎市岡本太郎美術館が建てられました。ここを象徴する巨大なタワー ‘母の塔(1999)’ は岡本太郎が説く瞬間瞬間を生きる人間の本質 ‘歓喜’ を表現しているように思います。


‘坐ることを拒否する椅子(1963)’ ‘顔のグラス(1976)’ ‘近鉄バッファローズマーク(1959)’‘オリンピック記念メダル(1972)’ ‘TARO鯉(1980)’ など、少し奇妙な形の作品たちは、私たちの日常生活に溶け込み、小さな感動や喜びを与えてくれます。







無心に、日常の瞬間を懸命に。 「生活=芸術」 そうありたいと日々心がけていきたいと思います。



