‘黒潮の画譜・異端の画家 田中一村’
1984年 NHKの「日曜美術館」によって、全く無名であった日本画家 田中一村が没後7年目にして初めて紹介され、驚きを持って世に知られるようになりました。このとき各地で催された展覧会のタイトルが冒頭のものです。
この2024年の秋、 ‘田中一村展 奄美の光・魂の絵画’ と題した大規模な回顧展が東京都美術館で開催されています。本展覧会は彼の少年時代から晩年に至るまで殆どの作品を網羅しています。
私は、1985年頃(学生時代)東京日本橋の高島屋デパートで開催された巡回展で、初めて田中一村の絵画に出会いました。当時から美術展といえば 近代~現代美術が中心でしたが、この展覧会(奄美で制作された作品展)を体験した時は、作品から発せられる強い殺気のようなオーラに全身鳥肌が立ったのを覚えています。
絵に魂が宿っており、‘生きている絵’ と感じました。きれいな絵画というより、身を切るように鋭く怖く、美しい絵画という印象でした。このような体験は、これまで ゴッホ(オルセー美術館)と田中一村だけです。
本展覧会では、40年振りに生の作品に再会できました。やはり奄美へ移住してからの作品は特別で、懐かしい思いで鑑賞させていただきました。驚いたのは新たに紹介された小学生時代の作品です。水墨画の小品ですが、当時神童と呼ばれるほどの高い技術力と深い精神性が伺えました。
今回は、奄美へ移住した50歳代から亡くなる69歳までの作品を挙げさせていただきます。
写実や抽象など ジャンルや様式に関わりなく、人の心を動かす作品は 常に精魂を込めて制作された作品なのだと思いました。