1980年代初頭に彗星のごとく現れた新表現主義の代表的な作家 ジュリアン・シュナーベル
1951年アメリカ・ニューヨーク生まれの画家であり、映画監督でもあります。
巨大なキャンバスに多数の皿や陶器の破片を張り付け 彩色した作品で注目を集めました。新表現主義は ‘ニュー・ペインティング’ とも呼ばれ、1970年代後半から1980年代半ばにかけて、それまで美術の潮流であったコンセプチュアルアートやミニマルアートへの反動から起きた大きなムーブメントです。
具象画を中心とし(抽象も)、原色を使った色づかいや大胆な筆触で描かれた混沌とした作品が多く、絵画の ‘手で描く’ という行為を復権させました。1980年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催されたピカソ展がこの動向に拍車をかけたともいわれています。
イタリア(3C:キア、クッキ、クレメンテ)、ドイツ(バゼリッツ、キーファー)、アメリカ(シュナーベル、バスキア、サーレ)などが、新表現主義の代表作家たちです。
シュナーベル作品は、これらのなかでも とりわけ色彩やタッチがダイナミックで、その荒々しい筆触や乱雑な感じの作風が大きな魅力です。これ以降、芸術表現は多様化し いずれのジャンルとも優劣なく認知されてきたと感じます。前述のコンセプチュアルアートやミニマルアートの他、大衆アートや土着アート。具象や抽象。表現法も平面、立体、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンス、CG…
最後に、ジュリアン・シュナーベルは映画監督としても活躍されています。1990年代以降 現在に至るまで公開されてきた「バスキア」「潜水服は蝶の夢を見る」「ミラル」「永遠の門 ゴッホの見た未来」など、いずれの作品も地味ながら 人の心を動かす美しい映画でした。