六本木の森美術館で4月24日から ‘シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝’ が始まりました。全く予備知識がないまま会場を訪れると、絵画? 陶芸? パフォーマンス? 音楽? 映像?いずれのジャンルを中心に活動している作家なのかと、しばらく疑問に思いながら「神聖な空間」と呼ばれる会場を進んでいくと、突然オルガン演奏にあわせた黒人2人による音楽のライブ・パフォーマンスに遭遇しました。‘ヘブンリー・コード(2022)’ と題されたハモンドオルガンB3と7つのスピーカーによるシアスター・ゲイツ率いるバンド ‘ザ・ブラック・モンクス’ メンバーの生の歌声は荘厳な空間を作り上げ、会場内に響き渡りました。

シアスター・ゲイツは1973年アメリカ生まれのブラック・アーティストで、彫刻と陶芸を中心に、建築、音楽、パフォーマンス、ファッション、デザインなど横断的に活動している現代美術作家との解説でした。陶芸は日本で学び、日本文化の民芸などに影響されたことが本タイトルの由来になっているとのことです。本展覧会では作家本人による作品以外に、彼が影響を受けてきた多くの文化的作品なども幅広く紹介されていました。
土や木材、タールや陶器、金属など素材は様々で、大胆なものから手仕事による繊細で緻密なものまで。表現方法も 平面、立体、陳列、インスタレーション、ライブ、映像、建築など特定のジャンルに殆ど収まりきらないものの、いずれの表現による作品からも 彼自身が込めた思想が強く発せられているように感じました。





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これまで、森美術館ではアラブやインド、中国など欧米以外の現在美術について積極的に目を向け紹介してきました。黒人アーティストの個人としての大規模な展覧会は、ポップアートのバスキアなどを除くと希ではなかったかと思います。今回、世界の第一線で活躍しているシアスター・ゲイツのような黒人作家を取り上げたことは、多様性やグローバル化が問われる現代において大きな意味があると感じました。
人種や文化の違いによる排他的な思想や迫害など考えさせられる部分は多く、互いの異なる文化や個人を尊重できる世の中になってほしいと少しばかり思いながら会場を後にしました。




