美術展巡り3 蔡 國強 展  ~国立新美術館~

昨年2023年の夏、国立新美術館において ‘蔡國強 宇宙遊-〈原初火球〉から始まる’ が開催されました。蔡國強は中国出身1957年生まれの現代美術家で、1986年から1995年まで日本を拠点に活動しています。2008年、2022年の北京オリンピック、北京冬季オリンピック開・閉開式の芸術監督を務めたことも記憶にあるところです。

彼の表現は、火薬の爆破による痕跡を平面や空間に残すという斬新な手法にあります。今回の展覧会では、1990年代初頭に発表され、美術界に衝撃を与えた ビッグバン プロジェクト‘原初火球’をはじめ、最近作まで30年以上にわたる作品(表現)が紹介されました。

〈地球はわたしたちの共同の家〉1985

会場は、間仕切りの無い広大な空間で、初期作品から現在に至る作品が年代順に展示されていました。これまで世界各地において数々の爆破プロジェクトを成功させていますが、いずれの作品も各々の時代における作者の思想が色濃く反映されています。

私が特に好きな作品は、初期のビッグバン 原初火球シリーズ〈胎動 II:外星人のためのプロジェクト No.9〉1991や〈私はE.T.-天神と会うためのプロジェクト 外星人のためのプロジェクトNo.4〉1990などです。火薬の痕跡が生み出す圧倒的な力強さと美しさが間近に迫ってくるような作品です。また、西洋的とも東洋的とも捉えられず、どこか根源的で普遍的な存在感を強く感じさせます。

原初火球〈胎動Ⅱ:外星人のためのプロジェクトNo.9〉1991 東京都現代美術館蔵
原初火球〈天地悠々:外星人のためのプロジェクトNo.11〉1991 福岡アジア美術館蔵
〈私はE.T.-天神と会うためのプロジェクト:外星人のためのプロジェクトNo.4〉1990 福岡アジア美術館蔵

最後に、本展覧会で最も深く印象に残ったのは、2023年6月26日 福島県いわき市四倉海岸における花火4万発、幅400mにおよぶ日中の花火プロジェクト 白天花火〈満天の桜が咲く日〉の記録映像です。震災のあった彼の地で、鎮魂や自然への畏敬の念、人々への希望を表現したものです。

蔡國強 白天花火‘満天の桜が咲く日’ 2023.6.26 福島県いわき市四倉海岸
蔡國強 白天花火‘満天の桜が咲く日’ 2023.6.26 福島県いわき市四倉海岸
蔡國強 白天花火‘満天の桜が咲く日’ 2023.6.26 福島県いわき市四倉海岸

彼の作品は ‘爆破’という激しい行為をもって宇宙や人間のルーツを表現するとともに、一方でどこか人間に寄り添い 希望を与える優しさを持ち合わせているように感じました。

原初火球シリーズ,1991
原初火球シリーズ,1991
〈延長〉1994 世田谷美術館蔵
〈歴史の足跡〉のためのドローイング,2008
〈銀河で氷戯〉2020
〈cAITMの受胎告知〉2023
〈未知との遭遇〉2023
〈未知との遭遇〉2023
〈未知との遭遇〉2023
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