作家紹介3 ルーチョ・フォンタナ  ~鋭く切り裂かれたキャンバス~

絵筆によらない平面とも立体とも定義できない ‘描かない絵画’ が代名詞の、1899年アルゼンチン生まれ イタリア出身の現代美術作家 ルーチョ・フォンタナ

彼の作品は、一度見れば誰しも忘れることができないほど刺激的です。‘空間主義’ と呼ばれるこれらの作品は、モノトーンの赤や黄、緑色などで地塗りしたキャンバスに ナイフで一刀、または幾重かに切り裂いて表現されたものです。陶器やキャンバスに穴を空けた作品も彼の代表作です。

ルーチョ・フォンタナ
空間概念 期待,1961
空間概念 期待,1965

フォンタナの国内での展覧会は1986年に池袋の西武美術館で開催されました。この年はイヴ・クライン展も同美術館で紹介され、これに続く現代美術の大きな展覧会となりました。当時学生であった私は、はじめて彼の描かれない作品を生で体験することができました。

空間概念,1964-1965
空間概念,1958-1960

フラットなキャンバスに、単純な物理的な処理を少し加えただけで、なんとも奥行きのある立体的な作品に変貌するのは、とても不思議な感覚です。フォンタナの作品を見るときは いつも、あちらこちら角度を変え のぞき込むような体勢になってしまいます。

改めて、単純さが生む‘究極の美’を再認識させられる作家です。

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