美術展巡り1 オラファー・エリアソン展  ~麻布台ヒルズギャラリーand国立新美術館~

2023年11月に東京の麻布台に新たなヒルズが幕を開けました。六本木ヒルズに次ぐ新たな文化拠点です。
ここでお披露目されたのが‘麻布台ヒルズギャラリー’であり、そのこけら落としとして、現在世界中で注目を集める光の芸術家 ‘オラファー・エリアソン’の展覧会が開催されました。

また同年、六本木の国立新美術館で開催された‘テート美術館展 光 -ターナー 印象派から現代へ’においても彼の作品が展示されました。

麻布台ヒルズ シンボルタワー

オラファー・エリアソンは、2006年に品川区の原美術館(2021年閉館)で国内初の大規模展覧会が開催され、好評のため会期が延期されるほどの盛況ぶりでした。会期終盤に何とか足を踏み入れることができた私は、これまで経験したことのない光の空間に身を委ねることとなりました。いずれ紹介したい作家ですが、ここでは昨年秋の展覧会を振り返りたいと思います。

麻布台ヒルズギャラリーは比較的こぢんまりしたギャラリーで、会場に入ると直ぐにオレンジ色の光を放つ新作‘蛍の生物圏 -マグマの流星-(2023)’が迎えてくれました。会場中央では‘ダブルスパイラル(2001)’など幾何学的な作品群が展示されていました。

蛍の生物圏 (マグマの流星),2023
ダブルスパイラル,2001

今回最も印象に残ったのは、インスタレーションのような空間芸術で、‘瞬間の家(2010)’と題された作品です。静寂で真っ暗闇の頭上空間から、曲線的に落とされる水にストロボ光が照射され、まるで無機物である水が生きもののように立体的に映し出されました。

闇と水と光。 いつまでもその場に佇んでいたくなるような空間でした。

瞬間の家,2010
瞬間の家,2010

一方のテート展でのオラファー・エリアソン作品 ‘星くずの素粒子(2014)’は、多数の格子とミラーで構成された球体を、ゆっくり動かしながら光を照射し、反射光を周囲へ映し出す作品でした。本体である球体(実態)より、天井や壁に映し出される‘光の影’がむしろ主役であり、鑑賞者である私は、見る位置を少しずつ変えながら、回転とともに絶えず変化する光の影を追いました。

星くずの素粒子,2014 テート美術館所蔵
目次